提示された謎
問題 3
$f(t)$ を、フーリエ変換 $F(s)$ をもつ実信号とします。次の 3 つの手がかりが与えられています。
- $f(t)$ は実数値である。
- $t leq 0$ に対して $f(t) = 0$ である。
- $mathcal{F}^{-1}{operatorname{Re}{F(s)}} = |t|e^{-|t|}$ である。
目標: $f(t)$ を求める。

数学的プロローグ:奇関数と偶関数
任意の実関数 $f(t)$ は、偶成分と奇成分に分解できます。
![[ f(t) = f_{text{even}}(t) + f_{text{odd}}(t) ]](../images/quicklatex.com-56aa14559b275643632fba881313266e_l3.png)
ここで、
![[ f_{text{even}}(t) = frac{f(t) + f(-t)}{2} ]](../images/quicklatex.com-2f70346e68e13fb469c0e344a93b63c9_l3.png)
および、
![[ f_{text{odd}}(t) = frac{f(t) - f(-t)}{2} ]](../images/quicklatex.com-57534cff7159414fefe67c519516eeff_l3.png)
です。この分解こそが、$f(t)$ を読み解く鍵になります。
未知をたどる
最初の道筋
$f(t)$ は実数値なので、その偶成分はフーリエ変換の実部に寄与し、一方で奇成分は虚部に寄与します。したがって、$operatorname{Re}{F(s)}$ の逆フーリエ変換がわかれば、$f(t)$ の偶成分がわかります。
概略図
この推論は次のようにまとめられます。
![[ begin{array}{cccccccccccc} & & f(t)& & & updownarrow{text{Decompose}}& & f_{text{odd}}(t) & + & f_{text{even}}(t) & downarrow mathcal{F} & & downarrow mathcal{F} & F_{text{odd}}(s) , (text{Imaginary, Odd}) & + & F_{text{even}}(s) , (text{Real, Even}) & downarrow text{Re{}} & & downarrow text{Re{}} & 0 & + & text{Re}{ F_{text{even}}(s) } & downarrow mathcal{F}^{-1} & & downarrow mathcal{F}^{-1} & 0 & + & mathcal{F}^{-1}{text{Re}{ F_{text{even}}(s) }} & & downarrow & & & mathcal{F}^{-1}{text{Re}{ F(s) }} = |t| e^{-|t|} & end{array} ]](../images/quicklatex.com-16c394d1bd9a4fb0a268377cb274e6f4_l3.png)
決定的な洞察
次が成り立ちます。
![[ begin{array}{ccc} f_{text{odd}}(t) + f_{text{even}}(t) & = & 0 , (text{for } t < 0) end{array} ]](../images/quicklatex.com-6e74187270ce579d048387e868cc0988_l3.png)
また、偶成分は $f_{text{even}}(t)=|t|e^{-|t|}$ なので、$t < 0$ に対して
$f_{text{odd}}(t) = -f_{text{even}}(t) = -|t|e^{-|t|}$
となります。
最後の解明
$f_{text{odd}}$ は奇関数なので、
![[ begin{array}{ccc} f_{text{odd}}(t) & = & begin{cases} -|t| e^{-|t|} & text{for } t < 0 t e^{-t} & text{for } t > 0 end{cases} end{array} ]](../images/quicklatex.com-6996bbbf788fe4c2c8ba6f100cc8e8cf_l3.png)
したがって、元の関数は
![[ begin{array}{ccc} f(t) & = & begin{cases} 0 & text{for } t leq 0 2 t e^{-t} & text{for } t > 0 end{cases} end{array} ]](../images/quicklatex.com-6626e06a91e5544724ca195b59140c26_l3.png)
です。
エピローグ:信号の解読
信号 $f(t)$ はもはや謎ではありません。フーリエ変換のパズルとして始まったものは、偶奇分解の直接的な応用になります。実部の逆変換が偶成分を与え、片側だけに存在するという条件が奇成分を決定するのです。したがって、
物語は続く:フーリエ変換のさらなる謎を解く
問題 4
下図に示す 2 つの関数 $f(t)$ と $g(t)$ を考えます。それぞれのフーリエ変換を $F(s)$ と $G(s)$ とします。


- 積分を一切行わずに、$F(s)$ の実部は何か。
- $F(s)$ の虚部が
と与えられているとき、$G(s)$ は何か。
フーリエ変換における実部の精妙さ
最初の問いは、積分を使わずに $F(s)$ の実部を求めるものです。
前の議論から、実関数のうち偶成分だけが、そのフーリエ変換の実部に寄与します。ここで $f(t)$ は、スケールされた偶関数
と、対応する奇成分
の組み合わせと見ることができます。
したがって、

が $F(s)$ の実部です。
$G(s)$ を求める
2 つ目の問いは、既知の $F(s)$ の虚部を使って $G(s)$ を求めるものです。
$g(t)$ は $f(t)$ の該当成分を 2 倍したものに対応するため、その成分について $G(s)=2F(s)$ です。したがって、与えられた虚部を用いると、

が $G(s)$ に対応する式になります。
