全章を組み終えたあとで制作方法の問題に気づくと、修正の代償は大きい。先に、内容を代表する一章を二つの形で試すほうがよい。実寸の印刷用PDFと、本当にリフローするEPUBである。
これは同じページデザインを二度書き出す作業ではない。紙の本はページを固定する。一方、リフロー型電子書籍では読者が文字サイズを変え、読書システムが画面に応じて改ページする。両方で成立する一章を作れば、残りの原稿に進む前に決めるべきことの大半が見えてくる。
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いちばん普通ではない章を選ぶ
最も整った章から始めない。あとで壊れそうな要素が多い章を選ぶ。複数階層の見出し、長い段落、画像とキャプション、脚注、引用、リスト、珍しい文字、言語の切り替えなどである。
二言語の本なら、二つの言語が一文ずつきれいに対応しない箇所を含める。歴史書や参考書なら、人名、日付、引用、出典注を入れる。技術書に数式、コード、表が実際に登場するなら、それも見本で試す。
見本は繰り返し直せるほど小さく、それでも現実的な問いに答えられるほど複雑であるべきだ。この章が通れば、まだ一度も試していない重要なページの種類は残るだろうか。
装飾する前に原稿を固定する
二つの出力を作る元になる原稿を一つに保つ。章、節、段落、画像、注に安定した識別子を付ける。提供された文章や画像の出所、適用される権利、承認済みの版も記録する。
大がかりな出版システムは要らない。短い構造化データで十分である。
{
"id": "ch03-p014",
"source": "chapter-03.md#L88",
"language": "ja",
"text": "著者が承認した段落の本文。",
"review": "approved"
}
大切なのは、修正を必ずこの原稿へ戻すことである。PDFとEPUBを別々に直すと、まもなく少しずつ異なる二冊になる。安定した識別子があれば、同じ段落が両方へ届いたか確認でき、悪い改行や欠落した文を元の位置までたどれる。
印刷ページを実寸で確かめる
文字組みを調整する前に、予定する判型を決める。Amazon KDPの現行の判型、塗り足し、余白の案内が示す通り、余白はページ数と塗り足しに左右され、本が厚くなるとノドの条件も変わる。間違ったページ寸法で美しい見本を作っても、制作上の問いには答えられない。
PDFを100パーセント表示で確認し、できれば見開きを数組印刷する。次を調べる。
- 本文の大きさが、画面上で美しいだけでなく実際に読みやすいか
- 見出しのあとに一行だけ残ったり、ほぼ空のページができたりしないか
- 綴じ側の内余白が読書の邪魔にならないか
- 画像、キャプション、注、ページ番号の間隔に一貫性があるか
- 必要なフォントが埋め込まれ、全ページが合意した寸法になっているか
塗り足しは制作条件であり、最後に加える飾りではない。内側の一要素でも裁ち落としまで届かせるなら、ファイル寸法と画像配置に最初から組み込む必要がある。
EPUBにはEPUBらしく振る舞わせる
ある一つの画面で印刷PDFに似ているかどうかでEPUBを判断してはいけない。EPUB 3.3は順序付きの読書 spine とナビゲーション文書を定義し、既定のレイアウトはリフロー型である。関連する読書システム仕様は、リーダーが内容を動的に配置する方法を定めている。
小さい文字と大きい文字、狭い画面と広い画面で章を開く。色を使うデザインなら、明暗のテーマでも見る。次を確認する。
- 目次が正しい見出しへ移動するか
- 紙のページ位置がなくても読書順が自然か
- 画像が表示領域に収まり、代替テキストが役に立つか
- 脚注と内部リンクが正しく往復するか
- 言語の切り替えや珍しい文字に適切なフォントとメタデータがあるか
- 形を保つためだけに見出し、キャプション、段落を画像へ変えていないか
Kindle Previewerを使えば、複数のKindle端末種別でリフロー型EPUBを確認できる。それでも別の標準準拠リーダーでも開くとよい。EPUBCheckも実行する。検証合格だけで心地よい読書体験が保証されるわけではないが、目でページを送るだけでは見落とす梱包や仕様上の問題を発見できる。
一つの修正を両方へ通す
次に、本当の修正を一つ加える。名前を直す、文を差し替える、キャプションを変える、注を移動するなどでよい。元の原稿だけを一度直し、両形式を再生成し、それぞれの該当位置を確認する。
これは見本の中で最も多くを教える試験である。制作方法が再現できるのか、それとも最初の成果が記録されていない手作業に依存し、数百ページで同じことを繰り返すのかが分かる。納品物には小さなマニフェスト、原稿台帳、スタイルシート、ファイルハッシュも含めたい。次の作業を、名前に「final」と付いたファイルの山ではなく、既知の入力から始められる。
多言語作品なら、揃えた箇所の先まで修正を追う。原文を変えたあとに、古い訳文、読み補助、用語集、索引語を残してはいけない。
受け入れチェックリストで決める
本全体へ進む前に、見本が実際に証明したことを書き出す。
- 承認済み本文が両形式に欠落なく入っている
- 見出し、注、画像、言語順が合意したスタイルに従っている
- 印刷寸法、余白、塗り足しの前提、埋め込みフォントが分かっている
- EPUBのナビゲーション、読書順、リンク、メタデータ、リフローを確認した
- 元原稿の修正から、分岐せず両形式を再生成できる
- 残った例外が「final」ファイルの中に隠されず、一覧になっている
見本だけで表紙、ISBN、販売サイトのメタデータ、印刷所、まれな付録のすべてを決める必要はない。繰り返し使う本文ルールを確定し、別の判断が必要な部分を明らかにすればよい。
動く見本を調べる
プロジェクトが所有する英語と繁体字中国語を使い、短い出典追跡可能な書籍見本を作った。公開パケットには四つの6 × 9 PDF、リフロー型EPUB、安定した段落ID付きの構造化原稿、スタイルシート、原稿台帳、検証報告、マニフェスト、ハッシュが入っている。PocketPolyglotでは、この実験の背景にある多言語出版パイプラインも確認できる。
これは工程の見本であり、顧客成果でも、同じレイアウトがすべての印刷所に合うという主張でもない。先にファイルを開き、比較し、再構築し、出所をたどれることに意味がある。
最終稿と必要な権利がそろい、本全体を依頼する前に代表的な一章を試したい場合、250米ドルのBook Specimen Sprintでは、最大5,000語の一章、合意した6 × 9印刷設定一つ、リフロー型EPUB一つ、原稿・検証パケットを作る。ページには範囲と除外事項を明記し、原稿のアップロードや支払いより先に適合確認を行う。
十分に難しい一章があれば、曖昧な制作見積もりを具体的な判断へ変えられる。
